佐藤春夫と大正日本の感性―物語を超えて
著者 | 河野 龍也 |
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本体価格 | 5,500円+税 |
ページ数/判型 | 432/A5判上製 |
ISBN/分類コード | 978-4-907282-54-7 C3095 |
本の紹介 | 望郷と放浪――虚構のフルサトを追い続けた“多面体”の才能のゆくえ! 本書の目標の一つは、一度自分を「日本人ならざるもの」に見立ててしまった春夫が、「では何者であるのか」というアイデンティティーの問題に、彼の作品でどう向き合ったのかを辿ってみることにある。 |
目次 | 凡 例
第一部 「物語」を超えて 起源の探求とアイデンティティー 第一章 「日本人ならざるもの」の誕生─うつろなるフルサトを求めて 「わんぱく時代」の〈うそ八百〉/中上健次と「愚者の死」/「或る女の幻想」のノスタルジア/「日本人ならざる者」のゆくえ/ 第二章 『田園の憂鬱』論─自己探求の中の“隠された公式” 養へよとは、生めよとは/自己暗示としての〈芸術的因襲〉/机上のコスモポリタン/黒い怪物のような母/新たな芸術観へ 第三章 「女誡扇綺譚」論─「物語」を超えて/台湾への旅/越境する眼差し/偽装される中立性/秘められた〈私〉の罪/「物語」を超えて 第二部 デザインされる「心」 自己存在をめぐって 第四章 画家の目をした詩人の肖像─表象と現前のはざまで/眼鏡のない自画像/拡大する「写実」の時代/小説「円光」のモラル/廃園にみなぎる「意志」/絵画的感性と文学的感性 第五章 「或る男の話」論─高等物置の秘密 幻のデビュー計画/二つの自然観/空っぽな家に満ちるもの/祈る姿を描くこと/自己救済のゆくえ 第六章 『田園の憂鬱』成立考─無意識という暗室 つぎはぎが生んだ新展開/『黒潮』版「病める薔薇」─失われた「君」/『中外』版「田園の憂鬱」─自意識の介入/無意識という暗室 第三部 詩・小説・批評 ジャンル論の実践 第七章 「自我」の明暗─初期小説と「詩情」 本書前半のまとめ/心持・気持・気分/空想のリアリティー─「或る女の幻想」/目の牢獄─「指紋」と「円光」/不安な身体─「歩きながら」と「戦争の極く小さな挿話」/個性という孤独─祈りとしての「詩」 第八章 「旅びと」論─紀行と小説 「日月潭に遊ぶ記」/王化と開発の外側へ/「旅びと」における旅愁/闇の親和力/「私語り」の批評性 第九章 「秋刀魚の歌」と「剪られた花」─「詩」を拒む「詩人」 「私小説論争」の異端者/ジャンル論としての「「風流」論」/消えてゆく「あなた」に/書けない地獄の語り方 第四部 異郷への旅 「日本人」であることの不安 第一〇章 「女誡扇綺譚」と台南─世外民たちの横顔 旅の批評性とは/廃屋の再発見/台南五条港とその時代/実在した酔仙閣/芸妲と文人/ 禿頭港の沈家・再論/開港地としての大西門外・268 第一一章 『南方紀行』論─歴史と物語のあいだ 動乱の中国へ/漳州訪問の経緯/安海事件の真相/開明軍閥・陳烱明/近代化への懐疑/ 鄭君の正体 第一二章 眠る男と煙の女─「日本人」であることの不安 蔣介石とひとつの舟に/路地裏の「愛国」/〈町はづれ〉の発見/「異邦人」と「日本人」/眠りと煙、そして女 付録1 「故郷」の幻影を「疎開先」に追う──戦後の創作ノートから 付録2 『田園の憂鬱』における「気分」「気持」「心持」の全用例 付録3 佐藤春夫「私小説」一覧(大正~昭和初期・臨川書店全集三巻~七巻) 初出一覧 薔薇の誘惑─あとがきに代へて 索 引 |
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